2023-09-28
自動車のライフサイクルアセスメント全体(Life Cycle Assessment: LCA)から見ると、炭素は主として「走行段階」で排出されるため、燃料消費量の削減と、電動化または水素化への移行が主要なトレンドとなっています。本文は、「電動化技術」、「環境への影響を低減できる材料の採用」、「製造工場のエネルギー転換」、「循環型リサイクル」の4つの側面から国際的な大手メーカーの動向を探ります。
世界の主要な自動車メーカーは現在、積極的に電気自動車シリーズの拡大を進めています。EUはすでに2050年のカーボンニュートラル達成を目標として設定、また2035年にエンジン車の新車販売を禁止するため、たとえば、ヨーロッパのメーカーでは、VW、Audi、BMW、Mercedes-Benzなどドイツのメーカーが最も積極的です。
電池はEVの重要なシステムであるため、EVのライフサイクルアセスメント全体において、電池の電力源と生産技術などが車両全体の炭素排出量削減を極めて大きく左右します。水素化技術については、自動車分野が脱炭素化とエネルギー安全保障の必要性に影響される中で、多くの自動車メーカーが燃料電池システムの研究開発とアプリケーションを積極的に推進しています。事例としては次のようなものがあります。
鉄鋼は自動車の製造に使用される材料であり、その生産過程は二酸化炭素の主な排出源の1つとなっています。世界の大手鉄鋼会社はいずれもこの問題の解決策を積極的に模索しており、従来の石炭に代えて水素エネルギーを使用することで、より環境保護に則した鉄鋼の生産が実現するよう尽力しています。以下がその事例です。
しかし、現在グリーン鋼材の推進は3つの課題に直面しています。第一に、十分な再生エネルギーとグリーン水素の供給を確保することが不可欠です。第二に、廃鉄を十分用意する必要があります。そして最後に、直接水素還元製鉄-電炉技術など、技術革新を進めることが必須です。これらはいずれも業界と政府が共同で取り組み、環境にやさしい鋼材の生産と応用を推進していく必要があります。
工場生産設備のスマート化はコストが高いものの、自動車製造業のデジタルトランスフォーメーションは省エネ効果が明らかです。例えば、日本のオムロン社は、スマートファクトリー診断サービスを提供しており、二酸化炭素排出、電力使用、エネルギー消費、生産量などのデータを可視化し、デジタルトランスフォーメーションを推進しています。ドイツの大手自動車メーカーは、再生エネルギーを使用することでグリーン省エネ目標を達成しています。VWの工場は太陽光発電の採用に切り替え、Mercedes Benzはドイツエネルギーサプライヤーと提携して太陽光・風力・水力エネルギーを購入しています。
しかし、自動車の製造工程のうち、鋳造とアルミダイカストの炭素排出量が最大であり、これは高い熱エネルギーに原因があります。鍛造においては、材料の加熱、コンプレッサーの駆動、熱処理工程のエネルギー消費量が比較的高く、グリーン電力を導入すれば炭素排出量を抑えることができるものの、電力供給、単価、設備投資の影響を受けるため、政府の助成などの措置があれば、電気化へ転換する後押しとなります。
気候変動と資源節約に対応しなければならないという圧力を受け、自動車のリサイクルと循環再利用が極めて重要となっていますが、環境保護意識が高いヨーロッパでも、多くの中古車が第三国へ輸出されており、リサイクルは不十分です。自動車に含まれる材料は、金属、ガラス、プラスチック、電気製品、電子部品など多岐にわたり、リサイクル方法はそれぞれ異なっています。そのうち鉄鋼のリサイクル率が最も高く、金属とプラスチックの複合材料は依然として分離が難しいため、一部のプラスチックが効果的にリサイクルされないままとなっています。
EVのリサイクル処理は、主にバッテリーシステムが課題です。EVの部品には、価値の高い重要な金属(コバルト、ニッケル、マンガン、リチウム等)と大型構造材料(たとえば、鉄鋼とプラスチック)があり、現在のリサイクル技術ではまだ全面的なリサイクルと再利用はできません。このため、多くのEVメーカーが積極的に電池のリサイクルを推進、モデル工場を建設したり特許を研究開発するなどして、電池材料の効果的なリサイクルと再利用を実現しようとしています。例えば、Mercedes Benzは炭素回収・変換企業と提携し、二酸化炭素を製品の原材料や燃料に変換し、部品の製造に利用しています。
世界の自動車メーカーは、カーボンニュートラルへの足取りを加速させており、同様に川下のサプライヤーにも省エネと改善に取り組むよう求めています。と同時に、エネルギー変換、製造工程での省エネ、循環型リサイクル、グリーン材料の使用を実行することで二酸化炭素排出量を削減するよう配慮しています。
総括すると、カーボンニュートラルというトレンド下での自動車産業の布石は、次の4つのポイントに要約することができます。(1)世界の大手自動車メーカーはいずれもEVの量産に注力し、普及速度を加速させています。(2)鋼材は自動車生産における最大の材料ですが、グリーン鋼材の普及にはまだ多くの克服すべき課題があります。(3)車両および部品業者は、グリーン工場、エネルギー管理システム、そしてグリーン製造プロセスの導入、先進的な製造およびデジタルトランスフォーメーションの推進、製造の最適化を継続して行っています。(4)自動車産業は業界の循環システムの構築を続けており、部品のリサイクルと再製造を通じて、重要材料のリサイクルと再利用を実現しています。
資料來源: 財団法人金属工業研究発展センター 金属情報網
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