2024-02-29
グローバルに発生しているネットゼロのうねりのもと、炭素削減は既に避けることができないテーマになっています。その中でグローバル経済と技術イノベーションの中心となっている半導体産業は近年、政府と顧客から来る二重のプレッシャーに直面し続けており、さらなるグリーン化、より持続可能な製造方法へ向かうよう求められています。
それゆえ、半導体業界は積極的に生産プロセスを積極的に調整し、気候変動に対応しようとしています。このような状況下、チップ製造過程の最終局面であるパッケージングとテストの段階でネットゼロを進める重要性が日増しに高まっています。本稿では、半導体のパッケージング・テスト企業の現時点における炭素削減状況と低炭素化に向けた取り組みに焦点を当てます。
ネットゼロを推し進める二大要因を探りますと、1つは法規による規制が重要な役割を果たしていることです。たとえば、米国ニューヨーク州で2022年に成立した『グリーンチップ法』の主旨は、半導体産業がネットゼロとさらなるグリーン製造プロセスへと向かうよう促すものです。いつも持続可能な発展の先頭に立ってきた欧州連合(EU)は、2021年に『欧州気候法』を公布、2050年までに欧州で気候中立を実現することを旨とし、2030年に温室効果ガスを最低55%削減するという中期目標を設定しました。半導体産業は将来、環境の持続可能性を優先処理事項とみなすでしょう。
2016年1月、台湾の環境保護庁(現・環境省)は公告を出し、製造過程における年間の直接的な炭素排出量が二酸化炭素換算で25,000トン以上になる企業に対して、法律に基づく炭素排出調査の実施と登録を求めました。これは、さらに多くの電力を使用する半導体メーカーは規定により温室効果ガス排出量を計算し、開示しなければならないことを意味します。
もう1つは、大口の最終顧客からの炭素削減要求です。たとえば、Apple社は既に明確なネットゼロ目標を定めています。ですから、半導体メーカーはグローバル市場での競争力を維持するために製品のカーボンフットプリントを必ず低下させる必要があります。
上述したような地球規模での環境規範と炭素削減要求に直面して、パッケージング・テスト企業は積極的にグリーン製造戦略とエネルギー管理を採用することでスコープ1とスコープ2の炭素排出に対応しています。
2022年から2022年の間、代表的なパッケージング・テスト会社は営業収入が安定して成長すると同時に炭素排出を効果的に抑制しました。この事実はこれらの企業が積極的に措置を講じ、環境へ与える影響を減少させていたことを明示しています。具体的なデータによりますと、日月光(ASE)では上記3年間の炭素排出年平均増加率はわずか0.2%でしたが、営業収入の年平均成長率は10.1%にも達していました。力成(Powertech)も炭素排出の伸び抑制を成し遂げています。この3年間、力成の炭素排出は毎年減少傾向を示しており、炭素削減措置の実施が一歩一歩成功していることを表しています。企業の営業収入と炭素排出の傾向が無関係になることは、パッケージング・テスト会社が営業収入の成長追求と環境責任の間でバランスをとろうとしていることを意味しています。
炭素排出構造ですが、IC設計会社(ファブレス企業)、IC製造ウェーハ工場、垂直統合型デバイスメーカー(IDM)大手は、おしなべてスコープ2の比率が比較的高くなっています。後工程(Outsourced Semiconductor Assembly and Test: OSAT)については、半導体の組み立てとテストを受託する大手(たとえば、アムコーや力成)では、スコープ2の排出割合が極めて高くなっており、すべて90%を超えています。このことは、パッケージング・テスト企業の主要な炭素排出源は、設備を使用する過程で外部のエネルギー供給企業から電力を購入していることに起因することを示しています。そのため、炭素削減政策のなかで設備の電力消費に伴う炭素排出を如何にして低下させるかが特に重要となります。
半導体のパッケージングおよびテストの過程で使用される工業用ガスには通常、地球温暖化係数(Global warming potential: GWP)が高いという特性があります。パッケージ・テスト企業は現在、フッ素含有排ガスのオンサイト処理設備を設置するほかに、ガス源を改善したり、もともとGWPが高いガスの代わりに低酸素型材料を利用しています。
スコープ2の電力使用に起因する排出量ですが、鍵は再生可能エネルギーの構築を強化することです。台湾のパッケージング・テスト工場によるグリーン電力への布石に注目しますと、欣銓(Ardentec)は台湾で最初にRE100(Renewable Energy 100%:再生可能エネルギー100%)に参加したパッケージング・テスト企業です。矽格(Sigurd)は同グループによる太陽光発電の取得と使用を確実なものにするために、宝晶エネルギー(INA Energy)と再生可能エネルギーの売買契約を締結しました。
一方、大手パッケージング・テスト企業のグリーン電力は、工場地帯の屋根や屋上に太陽光発電装置と蓄電設備を設置するように自家発電自家利用の方向に進んでいます。日月光はインフラ建設から始め、半導体気候関連コンソーシアム(SCC)によるエネルギー協力組織設立に参与することを通じて、アジア太平洋地区における低炭素エネルギーの構築発展を加速させています。
スコープ2の電力使用量を削減するため、パッケージング・テスト部門は各種の省エネ戦略を積極的に採用しています。単一の生産プロセスあるいは設備に改善を加えるだけでなく、デジタル技術ツールと結合させて、系統的に全体の最適化を進めています。
たとえば、サムスン電子の韓国にあるパッケージング・テスト生産ラインは既に無人化しています。台積電(TSMC)は苗栗県竹南鎮の先進パッケージング・テスト第6工場に5 in 1のスマート・オートメーション・システムを導入しました。また、日月光は、高雄市の先進ウェーハパッケージング工場でAI技術を応用し、製造過程における歩留まりと生産スケジュールの正確性を向上させることに成功しました。
以上をまとめますと、サムスン、台積電と日月光はパッケージング・テスト工場に無人化プロセス、スマート・オートメーション・システム、人工知能を利用した電力管理を導入、科学技術を基礎にした省エネプランを展開しています。生産効率を高めるにとどまらず、エネルギーの有効利用にも成功、同時にスコープ1とスコープ2の炭素排出を削減し、業界に参考可能なグリーン・トランスメーションの模範を提供しています。
パッケージング・テスト業界はチップ生産過程の重要部分であり、炭素排出のホットスポットは主に製造過程の設備による電力消費に集中しています。現在、パッケージング・テストのリーディング・カンパニーは既に使用するガスの取り換え、再生可能エネルギーの布石強化、自動化工場建設などの戦略を通してスコープ1およびスコープ2の炭素排出を軽減しています。
排出削減技術戦略という観点から眺めますと、解決プランは使用量を減少させるか、排出量を削減するかの2大方向に分けることができます。既に多くのパッケージング・テスト会社は工場に太陽光発電装置を設置、自分たちで発電し、自分たちで使用しています。このほか、再生可能エネルギー生産者とグリーン電力の購入協定に署名する、というのもパッケージング・テスト企業によく見られる戦略です。
製造過程自動化から見れば、企業は、ビッグデータの分析やエネルギー使用を最適化することで製造過程での炭素排出を削減するなど、AIデジタルツールを有効活用し、会社内部の炭素排出管理を強化することができます。
現在の進展状況は、企業が炭素集約度を低下させるという面では積極的であることを示しています。ですが、全体の炭素排出量はさらに減少させる必要があります。これらの炭素削減措置を取り続けることはパッケージング・テスト企業にとっても極めて重要です。産業の競争力を維持するのに資するだけではなく、さらに地球環境保護にも貢献することができるからです。
資料來源: 財団法人工業技術研究院産業科学技術国際戦略発展所・財団法人金属工業研究発展センター整理