2024-10-31
「長時間にわたる立法」を経て、欧州連合（EU）の「人工知能（AI）法」がついに発効します。この法律は AI を規制するための世界で最初のガイドラインです。では、 ChatGPTなどAI モデルをどのように管理するのでしょうか？ なかなか前進しなかった法案がようやく施行されるにもかかわらず、なぜEUは嬉しい気分になれないのでしょうか？
2022年にChatGPTなどのチャットボットが次々に誕生、それに伴ってEUが何度も修正してきた「人工知能法案」がいよいよ正式発効となります。
EU理事会の公式ウェブサイトによると、この法律はAIを規制する世界初の法律であり、マイルストーンの意義があります。
この法案で、EUは多様な AI システムをリスクカテゴリーごとに区別しています。
今年8月にこの法律は正式に発効、さまざまなリスクレベルで段階的に施行されます。
意図は善良であり、世界で最も先進的な法案の一つですが、欧州では懸念する声が出ています。
まず、「人工知能法」は大原則を扱っているだけで、実行可能な規制の細部が欠落していることです。もっとも、この大原則をまとめるだけで２年近くもかかったのですが。
たとえば、顔認識のようなアプリはこの法案の求めに基づいてテストする必要があります。そのためには、一部のパラメーターを変更し、当該アプリが引き続き顔認識できるかどうかを確認しなければなりません。しかし、「人工知能法」は、この種のテストをどのようにして実施するのかについて明確な方針を示していません。
法案の起草を主導したある外交官は、「成功は細部に宿る」とし、「しかし議員たちは疲れており、時間も切迫していました」と語りました。
この法案は細々として煩わしいため、最終的に新興産業を窒息させてしまう可能性があることを心配する人もいます。
デンマークの医療スタートアップ企業コルティ（Corti）の最高経営責任者（CEO）を務めるアンドレアス・クリーベ（Andreas Cleve）氏は、自社の「AIコパイロット」の使用を臨床医に勧誘することなど、AIに関連するビジネスアイデアを数多く持っていますが、EUの新たな法律がこれらのアイデアを実現する際の妨げになることを懸念しています。というのは、この法案はコルティ社のように従業員50名規模の会社にユーロで6桁に達する可能性があるコンプライアンス費用を負担するよう求めるからです。
クリーベ氏は「わたしが心配しているのは、この法案が資金力のない小規模会社にとって耐えられないものになることです」とため息をつきました。「資金調達がすでにきわめて困難な任務になっています。それなのに、現在はこの税金が徴収されます。わたしも時間をかけてこの法律を理解する必要があります」。
『フィナンシャル・タイムズ紙』は、「企業家たちは、『新たな規制を実施すると同時にAI超大国になる』というEUの能力に疑問を呈している」と直言しました。
しかし、それだからこそ、新法の制定はビジネスリーダーの考えに従いすぎていて、ある種のリスクに注意を払わない可能性がある、と憂慮する人もいます。
あるEU高官は、政府にロビー活動を行っている企業が「人工知能法案」を作成する一部の担当者に「故意に誇大な話をして脅かしていた」、と語りました。この高官は、企業のビジネスチャンスに焦点を合わせすぎると、最終的には現在多くのテクノロジー大手がユーザーのプライバシーを簡単に手に入れることができるのと同じような状況になり、完全に管理不能になる、との認識を示しました。
さらに、この法案をEU27か国で実施することも困難な課題です。人工知能法は、どの国の国家機関がこれらの規則を管理する責任を負うのか、を明確に規定していないためです。
人工知能法案の施行を主導するある当局者は、地元の電気通信会社、競争監督機関、データ保護監督当局の間で「どこが監督管理権限を掌握するか」、論争になるだろう、と予想しています。この当局者は「混乱を招く可能性がある」とし、「誰が法を執行するのか、についてはいろいろな意見がある」と話しました。
したがって、企業が EU 内の複数国で製品を発売する場合、異なる規制基準が適用される可能性があります。
当初、EU は、EU の人工知能事務局に人材を採用すれば、上記の問題の解決に役立てることができる、と思っていました。しかし、現在のところ、採用プロセスは緩慢であり、140のフルタイム・ポジションがまだ空席となっています。主な理由は、政策の専門家や技術の専門家はともに探すのが難しく、熟練した人材はまず大手テクノロジー企業に引き寄せられる可能性があるからです。
注目に値するのは、EU が抱える規制上のジレンマは欧州大陸にとどまらない可能性があることです。次に、G7、英国、米国などが規制法を制定しようとしています。 EUが直面する障害は他の地域にとってこの上もない参考になるでしょうが、どのようにしてバランスをとり解決すべきか、その予想もまた難しい問題です。
※中国語のオリジナル原稿はEU人口知能法の正式発効以前に執筆されたものです。
資料來源： EU、MIT、FT、CNBC (2024-07-19)
経済部
経済部投資促進司
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