2026-08-24

AIや高性能コンピューティングとクラウドデータセンターの拡大は、全世界の電力需要を急激に増加させた。また同時に、各国がネットゼロへの転換を推し進める中で、企業の電力に対する要求は、電力の供給量のみならず、低炭素といった特徴を併せ持っているかどうか、といった点が必須となっている。S&Pグローバルエナジー(S&P Global Energy)の統計によると、2025年にアメリカのAmazon・Google・Meta:Microsoftのデジタル巨人4社が合計で16,777メガワット(MW)の企業再生可能エネルギー契約を締結した。その数量は同年の世界全体の契約量の80%を占めている。その中で、風力発電は昼夜を問わず、電力供給が比較的安定しているため、これらの企業がグリーン電力を調達する際の重要な選択肢となりつつある。世界風力会議(Global Wind Energy Council; GWEC)の統計は、2025年、全世界で新たに設置した風力発電設備の容量が165ギガワット(GW)に達し、前年比で40%増加したことを示している。設備容量の累計は1,299ギガワット(GW)に及ぶ。また2026年から2030年にかけて、更に約969ギガワットが新設される予定で、アジア市場が主要な成長エンジンとなると見られている。しかしながら、風力発電の大規模接続には不確実性が伴い、既存の電力ネットワークに影響を及ぼす可能性を有している。風力発電の発電特性を適宜、調整するために、AI技術を活用してスマートグリッドを構築できれば、装置の状況をリアルタイムで把握でき、また装置の故障の事前検知が可能、さらには電力供給の安定性と運用効率が向上する。StartUs Insightsの市場調査では、世界のスマートグリッドの市場規模は、2026年の526億ドルから2035年には2,386億ドルに成長すると予測しており、年間平均成長率は約17%を呈している。風力発電とAIは相互にアシストし合い、AIがけん引する電力需要によって風力発電市場の空白部分を開拓し、風力発電はAIの運用・予測スキルを活用して電力供給の安定性を高めるといった、相互扶助で、より高効率なエネルギーシステムを作り上げていく。
このように双方向で互いに牽引しあう状況下において、世界の風力発電市場には、資金と開発エネルギーが急速に集結している。近年、世界のエネルギー市場は従前の「政策の補助をメイン」から、徐々に政策と市場のニーズが並行して発展するモデルへと転換を遂げつつある。デンマークのオーステッド(Ørsted)は風力発電所開発のグローバルリーダーで、同社の世界における設置総容量は約10.2GWに及ぶ。また更に8.1GWを建設中だ。その中で、台湾の大彰化風力発電所は2025年7月に2基目のタービンが接続され、台湾における設置容量は1.82GWに達した。目下のところ、台湾で最大規模の洋上風力発電開発会社である。デンマークのコペンハーゲン・インフラストラクチャー・パートナーズ(Copenhagen Infrastructure Partners, CIP)は、世界で約370億ドルの資産(アセット)を管理しており、開発したパイプラインは150GW以上に及び、現在、台湾で推し進めている洋上風力発電所の設置容量は合計500MWである。
開発メーカーが積極的に生産拡大を進める一方で、テクノロジーの大手企業も長期的グリーン電力契約を通じて、自社のエネルギー転換を推進している。Microsoftは2020年からスタートし、累計で約40GWもの再生可能エネルギー電力の購入契約を締結した。2025年までに年間で使用する電力を全て再生可能エネルギーで賄うといった目標を達成する見込みだ。Googleは24/7カーボンフリーエネルギー戦略を推進しており、AIを用いて、風力発電や太陽光エネルギーの供給時間帯に合わせて、データセンターの計算負荷の調整を行っている。Amazonは700項目以上もの風力・太陽光・蓄電プロジェクトを立ち上げており、その総容量は40GW以上に及び、世界レベルで見てもグリーン電力を調達する最大級の企業となっている。Metaは再生可能エネルギーの全面的採用を決定し、風力や太陽光エネルギーの新開発に対して継続的なサポートを行っている。
これらデバイスと調達のダブル成長のニーズを満たすために、風力発電技術は今まさに、大型化・浮体式(floating)、およびスマート化維持運用管理へと進化中だ。ドイツとスペインの合弁会社であるシーメンス・ガメサ(Siemens Gamesa)は、単機容量が15MWを超える大型機種を打ち出した。従来の主流機種8~10MWのものと比較すると、同等の容量を設置する場合に必要となる風力タービンの数を減らすことができ、海事工事や、その後の維持管理コストが低減できるために、この新機種が新世代の主流となっている。一方で、アメリカのGEはデジタルツインと予知保全技術を活用して、風車の運転状況をリアルタイムで分析し、発電効率と設備の信頼性の向上を図っている。
近年、洋上風力発電のグローバル開発メーカーが盛んに台湾への進出を果たしている。そのカギは、台湾政府が長期にわたって洋上風力発電政策を推進し、ブロック(エリア)開発と電力購入制度を整備したことで、プロジェクトの資金調達や商業化への転向方式が、より容易に予測可能となった点にある。さらに地学的にも東アジアや東南アジア市場が隣接。台湾は成熟した電子・機械・電力設備の産業基盤を有しており、グローバルサプライチェーンの重要な拠点へと、変化を遂げつつある。ØrstedとTSMC、Cathay Life(国泰人寿)の提携により、2025年7月に大彰化の西南および西北の風力発電所で初となる風車の並列発電が完成した。ここは世界初のTSMC専用のグリーン電力を供給する洋上風力発電所で、装置の総容量は920MWに達し、すでに20年間の電力購入契約の締結が完了している。またTSMCは2022年より、カナダのノースランド・パワー(Northland Power)と、ハイロン(海龍)風力発電所の電力購入についての協議を行い、合意に達している、2026年には追加協議にも改めて署名する予定だ。この2つのプロジェクトを併せると1.9GW以上ものグリーン電力を調達することになり、TSMCは世界最大のAIチップメーカーであると同時に、台湾における洋上風力エネルギーの最大の購入者というポジションを手に入れた。CIPが推し進める第一期の渢妙風力発電所では、2025年3月、新台湾ドル1,030億元(約5,205.3億円(2026年7月レート))のシンジケートローン(シローン)プロジェクトが完了、2027年末の完工を予定している。同発電所は台湾初となる、複数企業との電力売買契約を採用した風力発電所であり、購入側にはGoogleやメディアテック(MediaTek)、UMCなどの企業が含まれている。フォルモサ2(Formosa 2)の洋上風力発電は、2026年4月に新台湾ドルで589億元(約2,976.6億円(2026年7月レート))の借り換えが済んでおり、台湾およびアジア太平洋地域において初となる洋上風力発電プロジェクトの借り換え案件となっている。
風力発電の装置の設置が急速に進められる中、ハードウェアも風力発電所を支える重要な要素であり、台湾国内のハードウェアサプライチェーンも次第に成熟が進み、グローバルなビックネーム企業を誘致して共同でインフラ構築を進めている。世紀風電(Century Wind Power)はデンマークのBladt Industriesとの合資で世紀ブレッド(Century Bladt)を設立、ヨーロッパの製造技術を導入して、台湾国内で大型海底基礎の製造能力を有する唯一のメーカーとなった。CSBC(台船)はベルギーの洋上風力プロセスメーカーであるDEME Offshoreとの合資で台船環海(CDWE)を設立、海底基礎輸送プロセスの設置に取り組んでいる。Chin Fong(金豐機械)はデンマークのVestasと契約を締結、タワーのローカル製造へ参入している。
しかしながら風力発電所が急増する中、従来通りの“人による巡回点検”では、増加の一途をたどる運用・保守の需要への対応は困難なため、AIやデジタル技術を導入して設備の信頼性を高め、マシンの停止リスクを低減させることが、洋上風力発電業界の重要なトレンドになっている。Delta(台達電)はØrsted(沃旭)と協力して、蓄電システムのデモンストレーションシステムを構築、また台湾電力の新塭変電所の蓄電プロジェクトへ参画、さらにアメリカのNVIDIAと提携してバーチャルとリアルを統合した学習センターを設立し、デジタルツイン技術を用いて、設備シミュレーションシステムを構築し、風力発電設備の監視やメンテナンスの際の意思決定へと応用していく。
台湾は“2050年までにネットゼロ排出“を目標として、経済部は洋上風力発電の累積設置容量を2030年には10.9GW、2035年には18.4GWへと到達させる計画を打ち出している。また「風力発電4年推進計画」を通じて、まずはデモンストレーション、次にポテンシャル、最後にブロック(エリア)といった段階的戦略を進めており、現在すでにエリア開発の3-3期に突入している。この段階において、従来の「強制的な国産化要求」が正式に撤廃され、財務や技術面の審査を重視し、国産化評価の代わりにESG計画を取り込み、現地調達・環境に配慮した持続可能性、および企業の果たす社会的責任などの評価項目を盛り込んでいる。容量は3.6GWで、接続時期は2030年から2031年の計画だ。業者選定のメカニズムが市場化へと変化するにつれて、電力取引のモデルも政府が固定価格を保証し買い取る形から、企業による電力売買契約を主体とする仕組みへと徐々に移行している。わが国の政策と市場のニーズが並行してけん引する中、台湾の洋上風力発電の規模は拡大を続けており、2026年6月までに500基の風車が完成し、累計の装置容量は4.8GWに達し、GWECの統計によると世界5位にランクインを果たしている。このような成長力を支えるために、台湾電力の「パワーグリッドレジリエンス建設計画」は、今後10年間で5,645億台湾ドル(約28,528.1億円(2026年7月レート))を投じて、電力網と再生可能エネルギーの連携を強化していく予定だ。国家発展委員会もまた2030年までに発電側における蓄電容量を2.5GW、パワーグリッド側で3GWへ到達といった目標を設定。工研院(ITRI)は人材育成と技術研究開発といった二分野を同時に推し進め、パワーグリッド学校を通じて、分野横断型の人材を継続的に育成する他、近年ではAI技術と風力発電機の監視データを組み合わせて、システムが自動で設備異常の兆候を検知し、早期アラートを発信させている。また同時に沙崙にグリーンエネルギー技術のデモンストレーションエリアを設置し、風力発電の技術テスト・検証・産業とのマッチングプラットフォームを提供しており、台湾の風力発電産業が長期的に発展するための基礎を打ち立てた。
AIエネルギー需要の爆発的な増加と世界的なネットゼロ排出への転換といったダブルエンジンの下、風力発電はすでに代替エネルギーから、デジタル経済を支える重要なインフラの一つへとアップグレードを遂げている。今後の競争の優位性は、総合的な能力・スマート化レベル・エネルギーサービス能力によって決定づけられる。台湾は優れた風力発電の条件・半導体とICT技術の深くて厚い基盤、さらには政策によるサポートを有している。将来的に風力発電産業が部品製造からシステムレベル統合へのステップアップを遂げ、AIと風力発電技術の融合がたゆまぬ深化を続けることで、スマート風力発電やグリーン電力サービスとAIの計算能力サポートを一体化する「垂直統合(Vertical Integration)」の構築が可能となり、さらには、台湾がアジア太平洋におけるスマートエネルギー技術の輸出拠点として、戦略的ポジションを確立することにつながっていくと言える。
資料來源: 工研院産業サービスセンター研究分析グループ